2017年7月2日日曜日

伊藤英子の心があたたまる風景


伊藤英子には、夏になると思い出すある風景があります。それは、夏休みになると帰省していた祖母の家の風景です。祖母の家は裏に山があるので、夏になると虫がよくでてきます。蚊やハエや、蜘蛛くらいならいいのですが、いわゆる害虫と呼ばれるムカデや時には蛇もでてくるのです。それらは、いくら網戸をしていてもちょっとした隙間から家の中に進入してくるのです。ですから祖母は私たちが安心して眠れるように、いつも決まって蚊帳を用意してくれるのでした。あと、蚊帳の周りに蚊取り線香とね。伊藤英子はその風景がとても好きでした。虫が大の苦手な母はどうだったかはわかりませんが、大きな蚊帳にふとんを並べて、家族で川の字で眠る。そしてほのかに蚊取り線香の香りが蚊帳の中にもただよってくる。なんだかとても安心したのを覚えています。ところで蚊帳ってご存知ですか?一番わかりやすいもので説明するとしたら、トトロの中でさつきたちが蚊帳の中に入って眠るシーンがあるのですが、その場面に登場してくる大きなネット状のものが蚊帳です。伊藤英子の祖母の家にある蚊帳はまさにトトロにでてくるそれと同じですが、最近ではテントのような蚊帳なんかも販売されているようですよ。普段はみんなそれぞれの部屋のそれぞれのベッドで眠るのに、その時ばかりは同じ時間に、頭を並べて眠る。テレビがない部屋でしたので、テレビのかわりにおしゃべりして楽しむ。祖母の家だからこその楽しみ方でした。大人になった今も、祖母の家の蚊帳のある風景を思い出すと、なんとなく心があたたかくなるような気がします。

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